黒井健絵本ハウス 黒井健絵本ハウス

2024.04 29 Mon

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タイトル

ごんぎつね(2023.7-9月)

1F展示室

「車の色は空のいろ」

1.白いぼうし  2.春のお客さん  3.星のタクシー 4.ゆめでもいい(新刊)

・作:あまんきみこ
・担当編集者:松永緑/上野萌
・アートディレクション:楢原直子
・装丁:名久井直子

ポプラ社 2022年

 

1968年の刊行以来、50年以上読み継がれるロングセラー「車の色は空のいろ」シリーズは、あまんきみこさんの代表作のひとつに数えられます。今回新作「ゆめでもいい」を加えて新装版4巻が出版されました。
長く挿絵を担当されていた北田卓史氏に代わり黒井が担当することになりました。
その絵を知っておりましたし、大先輩の後を描くにあたって全4巻の絵の量といい、一度お断りするほどの躊躇がありました。編集部の皆さんの熱意と、絵ができるたびにお電話をくださったあまんさんの励ましでなんとか最後まで描きあげることができました。
1年に及ぶ制作期間でしたが、不思議なことにあまんさんの童話は私の心を浄化するのか、描いてる絵がどんどん素朴で善良になっていきました。主人公の松井さんをかっこいいタクシードライバーに描きたかったのですが、人の良さだけが際立っていきました。このシリーズのお話は喜びも悲しみもそして束の間の出会いも全てが心に染み込み、凪いでいきました。

2F展示室

「ごんぎつね」
絵本原画 全点展示 / VTR作品原画展示

[絵本作品]
・作:新美南吉
・担当編集者:中川勇
偕成社 1986年

 

[VTR作品]
朗読:大滝秀治
編集:男全修二/野村和史
アートディレクション:黒井健
制作:ポニーキャニオン/創映新社/偕成社 1994年

※「ごんぎつね」VTR作品は館内では上映していません。映像制作時に使用された原画の展示になります。

 

−絵本作品について

ふとしたいたずらで、兵十のうなぎを逃がしてしまったきつねのごん。後悔の気持ちから、山でとった栗や松茸をこっそりと届けますが、その気持ちが兵十に伝わることがないまま、悲しい結末を迎えます。
この絵本を描く前年、私は仕事に追われて年間15册以上の本を制作していました。しかし年末になって書店にいってみると私の描いた絵本は一冊も見つけることは出来ない始末でした。 描いた絵本を誰からも見てもらえない焦燥感に激しく襲われていました。 そんな 折り、この作品を描くようにと中川さんから依頼されたのです。自信を失っていた私はどう描いたものやらわからなくなってしまいました。探しあぐねて南吉のふるさと半田市をたずねました。そこで二三日過ごした後描き始めました。 一枚描いては迷い、二枚描いては立ち止まり、仕上がった絵は今まで描いたことのない絵になっていました。この絵本の表紙を描きあげた時の満足感や喜びは今でも覚えています。 

 

 

−VTR作品について

1994年にポニーキャニオンで製作された作品に描いたものです。(現在は販売されていません。)
朗読はどなたにお願いするか考えるとすぐに大滝秀治さんが浮かびました。お会いして絵本を見ていただいて引き受けてくださった時の感激は今でも忘れられません。
大滝さんの朗読を待って映像を作り始めたのですが、朗読の素晴らしさに感動して、これを生かすために余計なアニメーションを使わずカメラワークのみでゆっくり絵を追うことにしました。カット割りを繰り返す中で加える原画が必要になり描いたものです。これらを描いている際には終始大滝さんの声が聞こえていました。俳優大滝秀治さんの演じることの集中力は、物語のことばの一つ一つを理解し、声としてどう表現するかにこだわり続けることでした。大滝さんのお人柄に触れたことは、その後の私の仕事にも大きな影響を与えてくださいました。

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