「ともだち ともる」
内田さんとの絵本は2010年「だれかが ぼくを」以来の2冊目です。この絵本は殺意を主題として書かれた作品で、内田さんご自身の心底に漂う記憶を吐露されたものでした。 絵を添える私は、いつも自分自身の心の中を探して、作品に描かれた心に多少なりとも共鳴する部分を見つけ出して描き始めるのですが、強い殺意をいだいた記憶が見つかりませんでした。しかし大切なテーマでしたのでなんとか描き上げました。 内田さんの作品は様々な顔を持ち、私には計り知れない作家です。前作に心残りだった私は、内田さんにお会いした折に別なテーマで書いていただけませんかとお願いをしました。半年ほどしてこの作品が届きました。 ウシガエルとアマガエルがダブルキャストで友情が芽生えるお話しです。困ったことに私は両生類は苦手でした。繊細な心の揺らぎをカエルに託して描くには、まず好きなカエルを生み出すことが課題でした。出版までにはまた数年が過ぎてしまいました。 2作品のテーマこそ違いましたが、内田さんの作品に共通するものは<繊細な心>でした。
「だれかがぼくを」
きっと誰もが抱いたことのある憎しみという感情。自分や他人を殺してしまいたくなるほど、苦しんでいるときに、救ってくれたのは、聞き覚えのある声でした。愛する人のあたたかな言葉は、心にやすらぎを与えてくれます。 殺意を主題として書かれた文章。作者の内田麟太郎氏がご自身の心底に漂う記憶を吐露されたものでした。絵を添える私は、いつも自分自身の心の中を探して、作品に描かれた心に多少なりとも共鳴する部分を見つけ出して描きはじめるのですが、文面のような強い殺意を抱いた記憶が見つかりませんでした。そんな私が絵を添えてはいけないかもしれないとも思いました。日々新聞紙上で知る事件などから感じるやるせない思いから、これほど重要な主題はないとも思いました。どうしてもこの心を感じ取って描き上げなければ……と切望しました。描き終えるのに5年近い歳月を要しました。できあがった絵本は、従来の絵本らしくない絵本になっていました。 この絵本は、小さな子を持つ多くのお母さん、お父さんに読んでもらいたいと願っています。