■story
子狐に手袋を買おうと、母狐と子狐が夜の町へと出かけていきます。昔の怖い体験がよみがえって動けなくなった母狐は、子狐の片方の手を人間の手に変え、その手で手袋を買うように教えるのですが……。
■memory
1986年の「ごんぎつね」から2年後、その作品で自信を得た私は、この絵本の制作に取りかかりました。「ごんぎつね」では物語の舞台が南吉のふるさと、半田が書かれていましたが、この作品は『ほっぽうの・・』とのみ記されていました。きつねの坊やが手袋を買いに行く町をどう書いていいものか探し倦ねていました。 この作品は南吉が20才の時に書かれたものですから、昭和8年前後の町並みは?と資料を当っていました。
当時、知人の編集者が神田神保町辺りに空襲から逃れた戦前の建物が残っていると教えてくれました。 早速カメラを持って出かけて行きました。 取材した昭和初期の建物を、北の国に置き換えて架空の町を描いたものです。 発売から24年を経て版を重ね、165刷を数える作品になっています。私の出世作なのかもしれません。